甲状腺機能亢進症

理由を説明すると長くなってしまうので省略するが、Nさんが引っ越してすぐに私も山を下りて借家に移った。私に付き合って何度も引越を経験した福千代はさほどストレスを感じた様子もなく、その日のうちにもう新しい家になじんでいたが、1ヶ月もしないうち...

猫は義理堅い

昔家庭教師で通っていた家にビューティーという名の雌猫がいた。当時の私は猫好きではあるが猫を飼ったことがなく、猫にひどく飢えていた。そのためビューティーが勉強部屋に入ってくると嬉しくてたまらず、授業そっちのけでビューティーに話しかけ、膝にの...

一緒に散歩

福千代は私が外に出る時、よく後を付いて来た。M荘から職場に近い一戸建てに引っ越すと数か月後に町内会の班長なる役が回ってきて、町内会費だの赤い羽根募金だのを集めなければならなかったが、福千代はご近所をまわる私の後によく付いて来た。自分のテリ...

猫は催眠術師?

夜ベッドで本を読んでいると、必ず福千代がやってきて本と私の間に入り込み、喉をゴロゴロ鳴らす。するとどういうわけか突然強烈な睡魔に襲われて本を読むのが困難になり、電気を消して就寝する。これと同じような経験をされた方はいないだろうか。 ...

食事の攻防

食事の途中で電話がかかってくると、私はテーブルに並べられているものを素早く確認する。魚や海老などがあれば福千代に狙われる可能性が高いので、電子レンジの中に入れるなどして隠さねばならない。要注意のおかずが複数あって電子レンジの中に入りきらな...

死んだ後も一緒に寝る

猫は寝るのが好きである。とりわけ飼い主と一緒に寝るのが好きなようだ。私がベッドに入ると、違う場所で寝ていてもすぐさまやってきてベッドに飛び乗ってくる。そして私の首に前足を回して、荒い鼻息とともに結構な音量で喉をゴロゴロ鳴らす。私にとってそ...

武千代

福千代は一人っ子でいることを望んでいるし、私も愛情の全てを一匹に捧げるのが性に合っていると思うのだが、一度だけ、もう一匹飼うことを真剣に考えたことがある。 職場の駐車場にはいつも数匹のノラ猫がいた。人を警戒して1メートル以上近づくと...

猫の嫉妬

私は若い頃、猫屋敷とまではいかなくとも、4,5匹の猫と一緒に暮らしてみたいと思っていた。猫同士がじゃれ合う姿を見るのは楽しいし、そこここに猫がいるのはどんなに幸せなことだろうと憧れていた。しかし福千代は他の猫の存在を決して許さないだろう。...

救助猫

私は子持ちカレイの煮付けが好きだ。しかし子持ちカレイは決して安くない。なのであまり作らないが、ある日スーパーで半額になっていたので買ってきた。 卵にも味が浸みるよう、じっくり煮たのだが、食べてしばらくすると体中に蕁麻疹ができた。たぶ...

猫に見えるもの

猫は人間には見えないものが見えるという。福千代がどうやらそういうものを見ているなと思うことが3回あった。 福千代にとって2度目の引越の日のことである。引越屋さんが帰り、私が荷物を片付けていると、福千代は新居を隅々まで匂いを嗅いで探検...
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