猫は催眠術師?

夜ベッドで本を読んでいると、必ず福千代がやってきて本と私の間に入り込み、喉をゴロゴロ鳴らす。するとどういうわけか突然強烈な睡魔に襲われて本を読むのが困難になり、電気を消して就寝する。これと同じような経験をされた方はいないだろうか。

一日の最後の疲れた時間に本を読めば眠くなるのは当たり前、眠くなる時間にたまたま福千代が来ただけ、と最初は思った。しかし福千代が来る前は目がギンギンで本に集中していることも多い。それが福千代のゴロゴロを聞いた途端、目を開けていられないほど眠くなるのだ。夜ばかりではない。昼間でも同様のことが頻繁に起こる。

私が好きな漫画『グーグーだって猫である』の最初の方でこんな話があった。

腎臓病を患って今日明日の命と言われた愛猫サバが珍しく視線を外さず、作者で飼い主の大島弓子先生をじっと見つめた。その目を見ていると先生は急に眠くなり、耐えきれずに寝たのだが、わずか5分後に目が覚め、その短い間にサバは亡くなっていた。あれは死ぬ瞬間に立ち会えばもっとつらくなるからというサバの心遣いだったと先生は語っている。そしてその時のサバの目を「催眠術の目」と呼んでいるのだ。

それからこれは記憶が曖昧で、どこで読んだか聞いたか全く覚えていないのだが、ライオン(トラだったかもしれない)に襲われた人の話だ。自分に襲いかかる直前、ライオンは喉をゴロゴロ鳴らし、それを聞いていると急に眠くなり、噛まれた瞬間は痛みを全く感じなかったというのだ。

この話をもっと詳しく調べてみようと思いネットで検索してみたが、出てきたのは松島トモ子さんの話ばかりで、私が過去に聞いた話は一向に見つからなかった。もしかしたら事実ではなく、小説か何かで読んだのかもしれない。松島さんはライオンに襲われた時とても痛かったそうだ。

しかしもしこれが事実だったとしたら、ネコ科の動物は催眠術が使えるということになる。犠牲になる動物が苦しまないよう、痛くないように催眠状態にしてから息の根を止めるのだ。他の生き物を殺さなければ自らの命を存続させることができない肉食動物に、神が与えた特別な能力といえよう。

というわけで、ネコ科の最下位にいる愛しき猫たちも催眠術が使える。福千代の場合、催眠術は飼い主を殺すためではなく、読書をやめさせて早く一緒に寝るよう促すためにもっぱら使うようである。

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