恐怖のノロウイルス

自然さんによる写真ACからの写真

私は普段あまり味噌汁を作らない。体に良いと分かっていても、つい面倒くさくて省略してしまう。一か月のうちに一度も味噌汁を飲まないことも稀ではなかった。

しかしある日スーパーでアサリを見ると、無性にアサリの味噌汁が飲みたくなり、久しぶりに作ることにした。ひたひたの塩水につけると、アサリはすぐに顔と足(?)を出し、もそもそ動いてピューと砂を吐く。楽しいのでしばらくその様子を眺めたのち、鍋に投入した。

私はいつもこの時、少しばかり心が痛む。数秒で息絶えるとはいえ、アサリにとってこの数秒は無限に感じられることだろう。生きたまま煮えたぎる湯の中に入れられるのだ。これほど残酷なことはない。私にはアサリやシジミが限度だ。タコやカニなどは絶対に無理である。

断末魔の苦しみが終わり、貝が開くと私はすぐに火を止めた。あまり加熱しすぎると身がかたくなると思ったからだ。味噌を溶き入れ、青ネギをちらして出来上がり。アサリの身は柔らかく、良い出汁が出て、とてもおいしかった。しかし…

食後2時間ぐらいすると、お腹が痛くなり下痢をした。何度もトイレに行き、出すものは全部出した。いつもの食あたりならこれで終わるのだが、この時ばかりはそう簡単にいかなかった。夜中腹痛で目を覚まし、トイレに駆け込んだ。出る物が何もないのに腹痛はおさまらず、体をくの字にしてうなっていた。

(これがノロウイルスというものか…)

私はアサリを十分加熱しなかったことを死ぬほど後悔した。

ふとドアの向こうを見ると(またトイレのドアは開けっ放しである)、福千代が2メートルぐらい離れた所に座っていた。心配して来てくれたのだと思うが、なぜか体は横を向いていて、こちらの方を見ようともしない。

そのうち吐き気を催してきたので、私は体の向きを変えて便器に顔を突っ込んだ。すさまじい勢いで胃の中のものが飛び出した。消防車のホースから水が出るような勢いだった。私は苦しみながらも、未だかつて経験したことのない吐き方に、(これはすごい!)と新鮮な驚きを感じてしまった。

怒涛のように吐き出した後、少し落ち着いて横を見ると、いつの間にか福千代はトイレから1メートルぐらいの所まで移動していた。しかし相変わらず体は横を向いて目は閉じている。

トイレから出た後も胃の痛みがひどく、眠れそうもなかったのでこたつで横になっていた。福千代はしばらくそばで付き添っていたが、私の容態が安定したのを見るとベッドに戻っていった。

こんな風に心配してくれる福千代の存在は頼もしく、ありがたかった。

それにしても、私が心配で来てくれたのだろうに、なぜトイレにいる私を決して見ようとしなかったのだろう? 私が苦しんでいるのをつらくて直視できなかったのだろうか。もしそうなら、猫の神経は驚くほど繊細だ。福千代のいじらしさに胸が詰まった。

本当にありがとう、福ちゃん。(もしかしたら単にキタナイものを見たくなかっただけかもしれないが…)

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