救助猫

チョコクロさんによる写真ACからの写真

私は子持ちカレイの煮付けが好きだ。しかし子持ちカレイは決して安くない。なのであまり作らないが、ある日スーパーで半額になっていたので買ってきた。

卵にも味が浸みるよう、じっくり煮たのだが、食べてしばらくすると体中に蕁麻疹ができた。たぶん蕁麻疹なのだと思う。それまで一度も蕁麻疹というものになったことがないので断言できないが、皮膚がかゆくなり、赤くなって少し熱を持っていた。

そのあと風呂に入った。蕁麻疹が出た直後の入浴は良くないのかもしれない。しかし何といっても未経験なので良いのか悪いのか判断がつかず、入浴を遅らせる時間的余裕もなかったので、深く考えずに決行した。

湯に浸かっていると、すぐに動悸が激しくなり気分が悪くなった。これはまずいと思い浴室を出たが、そのあとの記憶がない。

耳元で福千代がしきりに鳴いていた。とても眠くて目を開けることができなかったが、あまりにも鳴くので何かあったのかと心配になり、力を振り絞って目を開けた。

私は自分がベッドで寝ているものと思っていた。しかし目を開けてみると、そこは脱衣所前の廊下だった。福千代が心配そうに私の顔を覗き込んでいる。私は素っ裸で倒れていたのだ。皮膚は冷たく、ひどく寒かった。起き上がろうとしても、頭がクラクラして思うように体が動かない。上体を起こすと強烈な吐き気に襲われたので、這うようにしてトイレに行き嘔吐した。便器の前でしばらく座りこんでいると気分が少し楽になり、パジャマを着てベッドにもぐりこんだ。

あの時もし福千代が起こしてくれなければどうなっていたことか。何時間も体が冷え切った状態で倒れていれば風邪ぐらいは引いただろう。あるいは気を失っている時に嘔吐して、窒息死していたかもしれない。スッポンポンで死ぬのはなるべく避けたいものだ。せめてパジャマぐらい着ていないと恥ずかしくて成仏できない。福千代は見苦しい全裸死体を人目にさらすという最悪な事態を防いでくれたのかもしれない。アサリの時といい、今回といい、私は悪い物を食べて福千代にひどく心配をかけてしまった。申し訳なく思うとともに、やはり感謝の気持ちでいっぱいだ。福千代がいつもそばにいてくれて私を守ってくれることが、本当に嬉しく、ありがたく、幸せだった。

ちなみに、あれ以降私は子持ちカレイは食べていない。

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