お出迎え

福千代は私が仕事から帰ると、必ず玄関で出迎えてくれた。「おかえりー、おかえりー」とにぎやかに鳴いて、私にぴったりついて部屋に入った。山に住んでいた時は猫ドアから自由に出入りできたので、毎晩駐車場まで出てきてくれた。また私の帰りを駐車場で待っていたということも度々あった。冬の寒い時期だと、一体いつから待っていたのだろうと心配になったりする。

ある時斜向かいのNさんが教えてくれた。午後4時ぐらいにうちの前を通ると福千代が駐車場にいて、私が帰ってくる方を向いてじっと座っていたと。私が帰宅するのが午後7時ごろだから、まさか3時間もずっとそこで待っていたとは考えられないが、途中何度か家の中に入りながらも、まだかまだかと様子を見に出たのではないかと思う。

仕事が休みの日は大概家にいたが、時々は用事などもあり、出かけることもあった。帰りが少し遅くなった日、福千代はNさんの家に行ってドアの前で鳴いたそうである。Nさんがドアを開けると、福千代がNさんを見上げて物問いたげにしているので、「ママは来てないよ」と言うと、くるりと向きを変えて帰っていったというのだ。

それを聞いて以来、私は休みの日はなるべく出かけないようにし、仕事が終わればダラダラ買物せずに早く帰宅するようにした。ひたすら私の帰りを待つ福千代に寂しい思いはさせたくなかった。私も1分でも早く福千代に会いたかった。

知れば知るほど愛おしくなる。一緒に暮らし始めて何年もの歳月が流れても、愛情は日々増すばかりであった。

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